山口地裁平成21年2月25日判決:過払い金ゲットサイト〜本人訴訟で過払金請求〜


山口地裁平成21年2月25日判決

これは「取引終了までの過払金は発生しない」とした
山口地方裁判所宇部支部の平成21年2月25日判決を
タイプしたものです。

判決をネットで調べたのですが、分からなかったので、
参考文献として、自分で打ち直したものです。

誤字や判決のリンクがあれば、教えていただけると助かります。

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平成21年2月25日判決

平成20年(ワ)第229号 不当利得返還請求事件

判 決
原 告 一般の方

被 告 株式会社 しんわ

主 文
  1 被告は原告に対し,129万7750円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

  2 原告のその余の請求を棄却する

  3 訴訟費用はこれを10分し,その1を原告の,その余を被告の負担とする

  4 この判決は第1項に限り仮に執行することができる

事実及び理由

第1 請求

    被告は原告に対し,146万4704円及びう143万3507円に対する平成14年6月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(仮執行宣言)

第2 事案の概要

  1 本件は,原告が,貸金業者である被告に対し,原告が借入金の返済として支払った金員につき過払いがあるとして,不当利得返還請求をすると共に,被告は悪意の受益者であるとして,支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の支払を求めた事案である。

  2 争いのない事案及び証拠等によって認定した前提事案

  (1) 株式会社信和クレジット(以下「信和クレジット」という。)及び被告は,貸金業法(平成18年法律第115号により法律の題名が改められるまでは貸金業の規制等に関する法律。)3条1項の登録を受けた貸金業者である(乙1 当裁判所に顕著な事実)。

  (2) 信和クレジットと原告は,平成2年10月20日付け借入限度基本契約(以下「本件基本契約」という。)に基づき,平成2年10月20日から継続的に借入れと返済を繰り返す金銭消費貸借取引を行った(乙1〜3)。

      上記の借入れは,借入金の残元金が一定額となる限度で繰り返し行われ,また,上記の返済は,借入金債務の残務の合計を基準として各回の最低返済額を設定して毎月行われるものであった(乙1)。

  (3) 信和クレジットは被告に対し,平成5年4月1日,原告に対する債権を譲渡し,被告は,信和クレジットから本件基本契約に基づく債権債務関係を引き継ぎ,被告と原告は,以後も平成14年6月5日まで継続的に借入れと返済を繰り返す金銭消費貸借取引を行った(甲1,乙1〜3)。

  (4) 信和クレジット及び被告と原告との間の金銭消費貸借取引の経緯は,別紙「計算書2」の「年月日」欄,「貸付金額」欄及び「返済金額」欄記載のとおりである(なお、これらは、別紙「計算書1」の「取引日」欄,「借入額」欄及び「返済額」欄と一致する。)。

  (5) 消滅時効の援用

      被告は,平成21年1月28日の第4回口頭弁論期日において,本件訴訟の提起された平成20年8月14日から10年遡った平成10年8月14日以前に発生した不当利得返還債務について消滅時効を援用する旨の意思表示をした(当裁判所に顕著な事実)。

  3 争点

  (1) 消滅時効の成否(抗弁)

    ア 被告の主張

      不当利得返還請求権は,不当利得の成立と同時に権利行使が可能であるから,その時点から消滅時効も進行する。

      そうすると,本件における消滅時効の起算点は,原告が本訴訟を提起した平成20年8月14日から遡った10年の平成10年8月14日であるから,平成20年8月4日の経過より,別紙「計算書2」の平成10年8月4日時点における過払金19万7167円の返還請求権については時効が完成している。

      そうすると,過払金は,別紙「計算書3」記載のとおりとなる。

    イ 原告の主張

      原告と被告は継続的に取引を行ってきたものであり,平成10年8月14以前の過払金の返還請求権が消滅時効により請求できないとの被告の主張は争う。

  (2) 被告は悪意の受益者か(請求原因)

    ア 原告の主張

      被告は貸金業者であり,利息制限法所定の利率を超える利息を収受することを知っていたから、過払いについて悪意である。

      したがって,過払金返還すると共にこれに対し民法所定の年5分の割合による利息(以下「過払利息」という。)を支払う義務を負う。

    イ 被告の主張

      被告が貸金業者であることは認めるが,被告は,監督官庁関係者等による解説書や判例等により,みなし弁済が成立すると信じ,原告から利息制限法所定の利率を超過する利息を収受していたのであるから,悪意の受益者には当たらない。

  (3) 利息制限法所定の利率によって計算した過払金の額及び過払利息の額

    ア 原告の主張

      別紙「計算書1」記載のとおり

    イ 被告の主張

      別紙「計算書2」もしくは「計算書3」記載のとおり

第3 当裁判所の判断

 1 争点(1)について

  (1) 基本契約に基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意(以下「過払金充当合意」という。)があるとき,同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は,過払金返還請求権の行使について,過払金充当合意と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である(最高裁判所平成20年(受)第468号事件平成21年1月22日第1小法廷判決参照)。

  (2)上記第2,2(1)ないし(4)記載の事実,証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば,本件基本契約においては,黙示の過払金充当合意があったと認めるのが,当事者間の合理的意思解釈に合致するというべきであり,また,前記特段の事情があったと認めるに足りる証拠はない。そして,信和クレジット及び被告と原告の間において継続的な金銭消費貸借取引がされていたのは,平成14年6月5日までであったから,消滅時効期間(10年)が経過する前に本件訴えが提起されたことは明らかであって、消滅時効は完成していない。

 2 争点(2)について

   貸金業者が利息制限法所定の制限超過部分の利息を債務の弁済として受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合には,当該貸金業者は,動向の適用があるのと認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわり民法704条所定の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである(最高裁判所平成17年(受)第1970号事件平成19年7月13日第二小法廷判決参照)。

   被告は,監督官庁関係者等による解説書や判例等により,みなし弁済が成立する(すなわち,貸金業法43条1項のいわゆる「みなし弁済規定」の適用がある)と信じて、原告から利息制限法所定の利率を超過する利息を収受していた旨主張するが,そのように信じるに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情について,個別的な事実の主張・立証をしない。

   よって、被告の主張には理由がなく,被告は悪意の受益者であると認めることができ,過払い利息を支払う義務がある。

 3 争点(3)について

   原告は,利息制限法所定の利率によって計算した過払金の額及び過払利息の額は「計算書1」記載のとおりであると主張している。

   「計算書1」では,過払金返還請求権が発生する都度過払い利息を算出し,これを借入金の返済に充当する方法により,過払金の額及び過払利息が計算されている。

   しかしながら,過払金返還請求権の消滅時効が,前記1(1)記載のとおり,継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点から進行すると解されるのは,過払金充当合意においては,新たな借入金債務の発生が見込まれる限り,過払金を同債務に充当することとし,借主が過払金に係る不当利得返還請求権(過払金返還請求権)を行使することが通常想定されていないから,一般に,過払金充当合意には,借主は基本契約に基づく新たな借入債務の発生が見込まれなくなった時点,すなわち,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその請求権を行使することとし,それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず,これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという趣旨が含まれているものと解するのが相当であるとされるからである(前記最高裁判所平成21年1月22日第一小法廷判決参照)。

   そうすると,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了するまでは,過払金返還請求権も具体化しておらず,これに対する悪意の受益者としての利息の支払義務も発生していないというべきである。

   よって、過払金の額は,「計算書2」記載のとおりとなり,過払利息は,最終取引のあった日の翌日である平成14年6月6日から支払うべきことになる。

 4 よって、主文のとおり判決する。

   なお,仮執行免脱宣言を付するのは相当でないからこれを付さないこととする。

 山口地方裁判所宇部支部

         裁判官  ○○ ○○

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