最高裁平成21年3月3日判決:過払い金ゲットサイト〜本人訴訟で過払金請求〜


最高裁平成21年3月3日判決

この判決は「消滅時効の起算点」を判断した

最高裁判決3部作の2つ目の判決です。

今さらという感じもしますが、まとめとして。

(「消滅時効の起算点」の説明はコチラをご覧下さい。)

 

この判決で特筆すべき点は、

裁判官の反対意見が記載されていることです。

 

結果的には、多数決の原理によって、

判決には影響はありませんでしたが、

同調できる部分もあり、とても参考になりました。

 

本当に借主にメリットがあるのか?

ちょっと考えさせられる部分もあります。

 

現に、消費者金融の審査も、年々厳しくなり、

借りにくくなっているのも事実です。

 

簡単に借りれなくなったというのは、

ある意味、いい事なんですが、

本当に本当にお金が必要な人にとっては、ピンチです。

 

本来、このような人に対しては、

行政がバックアップするべきだと思うのですが、

イマイチ頼りないので...。

 

最高裁判所には、

第一小法廷・第二小法廷・第三小法廷とありますが、

この判決は、最高裁判所第二小法廷で出されたものです。

 

同年1月には第一小法廷で、後日には第三小法廷でも

同趣旨の判決が出ています。

 

↓↓↓↓↓↓ ここから 判決 ↓↓↓↓↓↓

 

主 文

 

1 原判決を次のとおり変更する。

 

 (1) 第1審判決を取り消す。

 

 (2) 被上告人は,上告人に対し,635万8798円及びうち633万2772円に対する平成18年10月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 

2 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

 

理 由

 

上告代理人瀧康暢ほかの上告受理申立て理由第2章及び第3章について

 

1 本件は,上告人が,被上告人に対し,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引に係る弁済金のうち利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると,過払金が発生していると主張して,不当利得返還請求権に基づき,その支払を求める事案である。

 

被上告人は,上記不当利得返還請求権の一部については,過払金の発生時から10年が経過し,消滅時効が完成したと主張してこれを争っている。

 

2 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。

 

 (1) 被上告人は,貸金業の規制等に関する法律(平成18年法律第115号により法律の題名が貸金業法と改められた。)3条所定の登録を受けた貸金業者である。

 

 (2) 上告人は,遅くとも昭和54年1月18日までに,被上告人との間で,継続的に金銭の借入れとその弁済が繰り返される金銭消費貸借に係る基本契約(以下「本件基本契約」という。)を締結した。

 

上告人と被上告人は,同日から平成18年10月3日までの間,本件基本契約に基づき,第1審判決別紙1「原告主張書面」添付の計算書の「借入額」欄及び「返済額」欄記載のとおり,継続的な金銭消費貸借取引を行った(以下「本件取引」という。)。

 

 (3) 本件取引における弁済は,各貸付けごとに個別的な対応関係をもって行われることが予定されているものではなく,本件基本契約に基づく借入金の全体に対して行われるものであり,本件基本契約は,過払金が発生した場合にはこれをその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意(以下「過払金充当合意」という。)を含むものであった。

 

過払金充当合意に基づき,本件取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当した結果は,原判決別紙「利息制限法に基づく法定金利計算書」記載のとおりであり,最終取引日である平成18年10月3日における過払金は633万2772円,同日までに発生した民法704条所定の利息は2万6026円である。

 

 (4) 上告人は,平成19年1月11日に本件訴えを提起した。被上告人は,平成9年1月10日以前の弁済によって発生した過払金に係る不当利得返還請求権については,過払金の発生時から10年が経過し,消滅時効が完成していると主張して,これを援用した。

 

3 原審は,前記事実関係の下において,要旨次のとおり判断して,上告人の請求を375万9260円及びうち374万4000円に対する平成18年10月4日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で認容すべきものとした。

 

過払金に係る不当利得返還請求権(以下「過払金返還請求権」という。)は,個々の弁済により過払金が生じる都度発生し,かつ,発生と同時に行使することができるから,その消滅時効は,個々の弁済の時点から進行するというべきである。

 

上告人は,過払金返還請求権は,取引が終了した時点(本件においては平成18年10月3日)に確定し,その権利行使が可能になるから,上記時点を消滅時効の起算点と解すべきであると主張するが,借主は取引が終了するまで既発生の過払金の返還を請求できないわけではないから,上記主張は失当である。

 

したがって,平成9年1月10日以前の弁済により発生した過払金返還請求権については,発生から10年の経過により消滅時効が完成した。同日以降の弁済により発生した過払金は,原判決別紙「利息制限法に基づく法定金利計算書」記載のとおり374万4000円であり,これに対する平成18年10月3日までに発生した民法704条所定の利息は1万5260円である。

 

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 

前記のような過払金充当合意においては,新たな借入金債務の発生が見込まれる限り,過払金は同債務に充当されることになるのであって,借主が過払金返還請求権を行使することは通常想定されていないものというべきである。したがって,一般に,過払金充当合意には,借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点,すなわち,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし,それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず,これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという趣旨が含まれているものと解するのが相当である。そうすると,過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引継続中は過払金充当合意が法律上の障害となるというべきであり,過払金返還請求権の行使を妨げるものと解するのが相当である。

 

なお,借主は,基本契約に基づく借入れを継続する義務を負うものではないので,一方的に基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引を終了させ,その時点において存在する過払金を請求することができるが,それをもって過払金発生時からその返還請求権の消滅時効が進行すると解することは,借主に対し,過払金が発生すればその返還請求権の消滅時効期間経過前に貸主との間の継続的な金銭消費貸借取引を終了させることを求めるに等しく,過払金充当合意を含む基本契約の趣旨に反することとなるから相当でない(最高裁平成17年(受)第844号同19年4月24日第三小法廷判決・民集61巻3号1073頁,最高裁平成17年(受)第1519号同19年6月7日第一小法廷判決・裁判集民事224号479頁参照)。

 

したがって,過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は,過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である(最高裁平成20年(受)第468号同21年1月22日第一小法廷判決・裁判所時報1476号2頁参照)。

 

5 これを本件についてみるに,前記事実関係によれば,本件基本契約は過払金充当合意を含むものであり,本件において前記特段の事情があったことはうかがわれないから,本件取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は本件取引が終了した時点から進行するというべきである。

 

そして,前記事実関係によれば,本件取引は平成18年10月3日まで行われていたというのであるから,上記消滅時効の期間が経過する前に本件訴えが提起されたことは明らかであり,上記消滅時効は完成していない。これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は上記の趣旨をいうものとして理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。以上説示したところによれば,上告人の請求は理由があるから,原判決を主文のとおり変更することとする。

 

よって,裁判官○○○○の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

 

裁判官○○○○の反対意見は,次のとおりである。

 

私は,多数意見と異なり,過払金返還請求権の消滅時効は,その発生時から進行すると解すべきものであると考える。したがって,それと同旨の見解に立って,平成9年1月10日以前の弁済により発生した過払金返還請求権については,発生から10年の経過により消滅時効が完成したとして,その部分について上告人の請求を棄却した原判決に違法な点はなく,本件上告は,棄却されるべきである。以下,その理由を敷衍する。

 

1 金銭消費貸借において,借主が利息制限法所定の利率を超える利息を支払った場合には,その過払金発生の都度,不当利得返還請求権が発生し,借主は,その発生と同時にその請求権を行使することができる。

 

そのことは,金銭消費貸借にかかる基本契約において,過払金が発生した場合には,これをその後の新たな借入金債務に充当する旨の合意を含むものであっても同様であり,かかる合意の存在は,過払金返還請求権の行使において,法律上又は事実上何らの支障を生じさせるものではない。

 

2 多数意見は,「一般に,過払金充当合意には,借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点,すなわち,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし,それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず,これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという趣旨が含まれているものと解するのが相当である。」とするが,明示の特約が定められていないにもかかわらず,過払金充当合意に上記のような過払金返還請求権の行使時期に関する合意まで含まれていると解することは,契約の合理的な意思解釈の限度を超えるものであり,契約当事者が契約締結時に通常予測していたであろう内容と全く異なる内容の合意の存在を認定するものであって,許されないものというべきである。

 

また,過払金返還請求権は,法律上当然に発生する不当利得返還請求権であるところ,その精算に関する充当合意についてはともかく,その請求権の行使時期に関して予め合意することは,その債権の性質上,通常考えられないところである。

 

3 多数意見はまた,「借主は,基本契約に基づく借入れを継続する義務を負うものではないので,一方的に基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引を終了させ,その時点において存在する過払金を請求することができるが,それをもって過払金発生時からその返還請求権の消滅時効が進行すると解することは,借主に対し,過払金が発生すればその返還請求権の消滅時効期間経過前に貸主との間の継続的な金銭消費貸借取引を終了させることを求めるに等しく,過払金充当合意を含む基本契約の趣旨に反することとなるから相当でない。」とする。

 

しかし,過払金返還請求権を行使すれば,貸主は,事実上新たな貸付けに応じなくなる蓋然性は高く,その結果,借主との間の継続的な金銭消費貸借取引を終了させることになると見込まれるが,そうであるからといって,借主に,行使することのできる過去の過払金返還請求権を留保させながら,なお継続的な金銭消費貸借契約に基づき新たな借入れをなすことができる地位を保持させることが,法的に保護するに値する利益

であるとは考えられない。

 

多数意見のように,取引終了時から時効が進行すると解すると,その取引開始時が数十年前であり,不当利得返還請求権の発生がその頃に遡るものであっても,その後取引が継続されている限り,取引終了時から過払金発生時に遡って不当利得返還請求権を行使することができることとなり,現に本件においては,訴提起時から27年余も以前の過払金の請求が認められることとなる。

 

しかし,かかる事態は,商業帳簿の保存期間が10年であること(商法19条3項),時効制度が,長期間

の権利の不行使にかかわらず,その行使を認めることが,かえって法的安定を害しかねないことをもその立法理由とする制度であること等,期間に関する他の諸制度と矛盾する結果を招来することとなり,当事者に予測外の結果をもたらすことになりかねない。

 

また,多数意見のとおり,不当利得返還請求権の時効期間の始期が取引終了時になると解することになると,従来から金銭消費貸借にリボルビング方式を採用していた貸主は,その契約の始期が相当以前に遡るものについては,借主が新規の借入れをなした後に過去に遡って不当利得返還請求権を行使した場合には,新規の貸付金が10年以上前に生じたものを含む過払金と相殺充当されるほか,更に別途不当利得返還請求に応じなければならないこととなる可能性が存する以上,新規の融資に応じないこととなると見込まれるのであって,多数意見の解釈は,基本契約に基づいて長期間に亘って継続して融資を受けてきた借主が更に継続して融資を受けることを希望する場合の借主の利益に適うものとは必ずしも言えないのである。

 

多数意見の解釈によって利益を得るのは,既に基本取引契約を終了したうえで,不当利得返還請求権を現に行使し,あるいは行使しようとしている一部の借主に限られるのであって,かかる借主の保護のために,契約の意思解釈の枠組みを著しく拡大することは妥当とは言えない。

 

なお,多数意見は,上記の論理を展開したうえで,最高裁平成17年(受)第844号同19年4月24日第三小法廷判決及び最高裁平成17年(受)第1519号同19年6月7日第一小法廷判決を参照判決として引用する。

 

しかし,上記各引用判決は,いわゆる自動継続特約付の定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効の起算点に関する判例であるが,自動継続定期預金契約における自動継続特約は,預金者から満期日における払戻請求がなされない限り当事者の何らの行為を要せずに満期日において払い戻すべき元金又は元利金について,前回と同一の預入期間の定期預金契約として継続させる内容であることが預金契約上明示されているのであって,本件の如き不当利得返還請求権の消滅時効期間の始期に関する契約の意思解釈に関する先例としては,適切を欠くものというべきである。

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