札幌高裁平成21年4月10日判決:過払い金ゲットサイト〜本人訴訟で過払金請求〜


札幌高裁平成21年4月10日判決

この判決は、
「過払利息(5%)の発生は最終取引日以降」とした
札幌高裁平成21年4月10日判決をリライトしたものです。

今回、 けいおん さんのご好意で、判決を入手することができました。

お手数をおかけした、けいおん さんに、
改めまして、深く感謝・御礼申し上げます。m(_ _)m

現在、業者は当判決を含む、
山口地裁平成21年2月25日判決」や
大阪高裁平成20年4月18日判決」を盾に、
過払い利息の発生時期に対して、激しく抵抗しています。

しかしながら、
これらの判決は、数多の判決の中の1つに過ぎず、
ほとんどの判決は「5%利息は過払い発生日」とされています。

良くも悪くも「最高裁判決」が出てしまえば、
「それに右へならえ」で簡単なのですが、
現状は、原告・被告とも、手探り状態です。

当ブログでも、
改めて、対抗手段(準備書面)を考えていきたいと思っています。

↓↓↓↓↓↓ ここから 判決 ↓↓↓↓↓↓

平成21年4月10日判決言渡

平成20年(ネ)第379号 不当利得金返還請求控訴事件
(原審・札幌地方裁判所浦河支部 平成20年(ワ)第37号)

平成21年2月27日 口頭弁論終結

判 決
控訴人        株式会社SFコーポレーション
           (旧商号 三和ファイナンス株式会社)

被控訴人       一般の方
訴訟代理人弁護士   ○○ ○○

主 文
1 原判決を次のとおり変更する。

 (1) 控訴人は被控訴人に対し,99万6995円及びこれに対する平成19年5月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 (2) 被控訴人のその余の請求を棄却する。

2 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを10分し,その1を被控訴人の負担とし,その余を控訴人の負担とする。

3 この判決は,第1項(1)及び第2項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判

 1 控訴人

 (1) 原判決を取り消す。

 (2) 被控訴人の請求を棄却する。

 (3) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。

 2 被控訴人

 (1) 本件控訴を棄却する。

 (2) 控訴費用は控訴人の負担とする。

第2 事実の概要

   本件において,被控訴人は,控訴人との間で金銭消費貸借契約を締結して,借入れ及びその返済を繰り返し,この過程で,利息制限法所定の制限を超過する利息を支払い,超過分を元本に充当し,計算上元本が完済となっても,更に支払った過払い金があると主張して,不当利得返還請求権に基づき,その返還を求めるとともに,控訴人が悪意の受益者であるとして,過払金に対する民法704条の「利息」を請求している。

   原審は,被控訴人の請求を全部認容し,控訴人がこれを不服として,控訴人のみが控訴を提起した。当審において,被控訴人は,請求を減縮し,控訴人はこれに同意したため,被控訴人の請求は,「控訴人は被控訴人に対し,117万2855円及び113万5126円に対する平成19年5月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」となった。

 1 前提事実及び当事者の主張は,次の2のとおり補正するほか,原判決書「事実及び理由」欄の「第2 事実の概要」の「1 前提となる事実(争いがないか,容易に認められる事実)」,「2 争点(1)(法律上の原因を欠く利得)」,「3 争点(2)(消滅時効)」及び「4 争点(3)(悪意の受益者)」のとおりであるから,これを引用する。

 2 原判決の補正

 (1) 原判決書2頁4行「別紙」を,「別紙利息制限法に基づく法定金利計算書(以下「原告計算書」という。)」と改める。

 (2) 原判決書2頁5行「(甲1)」を、「(甲4)」と改める。

 (3) 原判決書2頁13〜14行「別紙残元金額欄記載の赤字」を、「原告計算書「残元金」欄記載」と改める。

 (4) 原判決書2頁15行「168万2304円」を「113万5126円」に、「5万8041円」を「3万7729円」に,それぞれ改める。

第3 当裁判所の判断

   当裁判所は,減縮後の被控訴人の請求は,主文第1項(1)の限度で理由があると判断する。その理由は,次のとおりである。

 1 取引の経過について

   乙第1号証の1及び2によれば,被控訴人は控訴人との間で,平成9年8月21日,借入限度額を50万円とする基本契約を締結したことが認められ,乙第3号証によれば,その後,別紙計算書「年月日」欄記載の日に,「借入金額」欄記載の金額を被控訴人が控訴人から借り入れ,「弁済額」欄記載の金額を被控訴人が控訴人に弁済したことが認められる。

 2 争点(2)(消滅時効)について

   乙第1号証の1及び2並びに乙第2号証の1及び2によれば,被控訴人が控訴人との間で締結した基本契約においては,返済方式として借入金額スライドリボルビング方式が採用され,被控訴人の借入れは,借入金の残元金が一定額となる限度で繰り返し行われ,また,返済は,借入金債務の残額の合計を基準として各回の最低返済額を設定して毎月行われるものであったことが認められる。

   このような基本契約においては,基本契約に基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意(以下「過払金充当合意」という。)を含むものと解される。

   過払金充当合意がある場合においては,新たな借入金債務の発生が見込まれる限り,過払金を同債務に充当することとし,借主が過払金に関わる不当利得返還請求権(以下「過払金返還請求権」という。)を行使することは通常想定されていないものというべきである。

   したがって,過払金充当合意には,借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点,すなわち,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし,それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず,これをそのままその後に発生する新たな借入金への充当の用に供するという趣旨が含まれているものと解するのが相当である。

   そうすると,過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引継続中は過払金充当合意が法律上の障害となるというべきであり,過払金返還請求権の行使を妨げるものと解するのが相当である。

   以上によれば,過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,この取引が終了した日から過払金返還請求権の消滅時効が進行するものと解され,過払金が発生する都度,発生した過払金について発生の日から消滅時効が進行するものではないと解すべきである。

   乙第3号証によれば,継続的な金銭貸借取引が終了したのは,平成19年5月21日であると認められ,これが消滅時効の起算点となるから,未だ消滅時効が完成していないことは明らかである。

 3 争点(3)(悪意の受益者)について

 (1) 民法704条の「悪意」とは,「法律上の原因」がないことを知っていることをいうから,過払金という不当利得については,計算上元本が完済となったことを知っていることを意味する。控訴人は,利息制限法の制限金利に従って計算すれば,計算上元本が完済となった後にも返済を受けており,不当利得については悪意の推定を受けるものであるが,控訴人は,平成18年法律第115号による改正前の貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)3条1項の定める登録を受けた貸金業者である(弁論の全趣旨)から,貸金業法43条のいわゆるみなし弁済が成立すると信じるにつき相当な理由があるのならば,悪意の推定を免れると解される。

     しかし、控訴人が日常の業務において貸金業法17条及び18条の書面を交付するなどみなし弁済が成立すると信じるにつき相当な理由があるといえるほどの業務処理を行っていたと認めるに足りる証拠はない。したがって,控訴人は,不当利得について悪意の推定を免れない。

 (2) 民法704条の「利息」は,悪意の受益者が受けた利益に付して返還すべきものであるから,利息の起算点となるのは,不当利得返還債務の弁済期からであると解される。前記2に判示したとおり,過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引において,その取引の終了前は,悪意の受益者が受けた利益,すなわち過払金が発生しても,その行使に法律上の障害があるから,過払金の弁済期は取引終了の日の翌日であると解される。したがって,上記取引の継続中は,たとえ過払金が発生しても,これに利息を付した上で,その後の借入金の元本に充当することはできない。

     被控訴人の作成した計算書(甲第4号証)においては,過払金発生の都度,民法704条の「利息」(同号証の「過払利息」欄の金額)が発生したとして,これを後に借りた借入金の元本に充当しているから,未発生の利息をも元本に充当したことになる。

     以上によれば,控訴人が悪意の受益者であるとしても,返還すべき過払金は,別紙計算書のとおり,取引終了までは民法704条の「利息」を付さずに計算すべきであり,控訴人は被控訴人に対し,99万6995円及びこれに対する取引終了の日の翌日である平成19年5月22日から年5分の割合による金員を返還すべきものである。

 4 結論

   以上によれば,被控訴人の請求は,主文掲記の限度で理由があり,その余の請求は理由がないから,これと異なる原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。

   札幌高等裁判所第2民事部

         裁判長裁判官     ○○  ○

            裁判官     ○○ ○○

            裁判官     ○○ ○○

↑↑↑↑↑↑ ここまで 判決 ↑↑↑↑↑↑
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